塾長コラム
歯科国試合格者数減の時代とは|塾長コラム137 公開させて頂きました。
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各歯科大学生と既卒生のみなさん、こんにちは、弘中塾の弘中 崇です。
本日は
どうぞ最後迄宜しくお願い致します。
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こうした中で2026年4月23日に財務省の財政制度等審議会では医学部・歯学部・薬学部の定員について人口減少や医療提供の効率化を踏まえ大胆な削減に踏み切るべきだという考え方が示されました。同省は歯科医師・薬剤師について2012年以降の歯科医師国家試験合格者数が平均で定員数の約8割にとどまっていることなどを挙げ既に養成定員が過剰であるとの見方をはっきりと示しています。
これは歯科医師を目指す人たちにとって決して小さなニュースではありません。もちろんこの提言がそのまま歯科医師国家試験の合格者数を削減する決定になったわけではありません。大学の入学定員をどのように変更するのか歯科医師国家試験合格者数をどのように考えるのかについてはそれぞれ別の制度上議論が必要です。
しかし国の財政を担当する財務省が人口減少と医療提供の効率化を背景として医学部・歯学部・薬学部の定員削減を明確に提言したことは今後の政策を考える上で重要な変化です。
僕はこれまでの歯科医師国家試験推移と現在の大学を取り巻く状況を合わせて考える必要があると感じています。
2026年3月に発表された第119回歯科医師国家試験結果は次のとおりでした。
歯科医師国家試験結果には問題の難易度・受験者の学力・大学における教育・卒業までの過程・既卒者の受験状況等様々な要因が関係します。合格者数が減少した理由を一つの要因だけで説明することはどうしてもできません。ただ受験生にとって重要なのは実際に合格した人数が減少したという事実です。
歯科医師国家試験を目指す人は合格率という数字だけでなく合格者数や新卒・既卒それぞれの結果にも目を向ける必要があります。特に既卒者については第119回の合格率は27.8%でした。既卒者として再挑戦する場合は現役時代とは異なる課題を抱えていることも少なくありません。一度不合格になったからといって次も必ず不合格になるわけではありません。しかし昨年と同じ勉強方法を続ければ良いとも限りません。合格者数が減少する時代だからこそ自分の学力と勉強方法を客観的に確認する事がこれまで以上に重要です。
一つは人口減少です。
これから日本の人口が減少していく中で医療を必要とする人の数や医療需要が地域や診療分野によって変化していくことが予想されます。高齢化が進む一方で人口そのものは減少していきます。
もう一つは医療提供体制の効率化です。
医療を支える人材や財源には限りがあります。医療費の適正化を進めながら必要な医療を安定して提供していくためには人材をどのように養成しどのように配置するのかという問題を避けて通れません。財務省は医師・歯科医師・薬剤師の人数が増加してきたことを指摘し今後の人口動態や医療提供の効率化を考えるとこれらの資格を持つ人材をさらに増やす必要性は乏しいとの見方を示しています。
そして学問分野間の人材配分を適正化する観点から医学部・歯学部・薬学部の定員削減を提言しました。
ここで注意しておきたいことがあります。
財務省が示したのは財政制度等審議会における政策提言です。歯科医師国家試験合格者数を毎年何人にするのかあるいは各大学の歯学部定員を何人削減するのかがこの提言だけで決定したわけではありません。しかし政策を考える上でこうした提言が無視できないことも確かです。
今後は関係省庁(厚労省・文科省)での検討や制度の見直しが進めば歯学部の定員や歯科医師養成のあり方に影響が及ぶ可能性があります。僕はこれから歯科医師を目指す人たちには試験問題だけでなくこうした社会や政策の変化にも必ず関心を持ってほしいと思っています。
入学定員充足率=入学者数÷入学定員×100(%)
例えば入学定員が100人の学部に80人が入学した場合入学定員充足率は80%です。定員充足率が100%を下回っていれば定員に対して入学者が不足していることになります。ただし定員充足率が低いからといってその大学教育について質が低いと直ちに判断できるわけではありません。地域における役割・教育内容・学生の修学状況・大学全体の経営状況なども確認する必要があります。
それでも定員充足率が長期間にわたって低い状態にある場合は大学経営にとって重要な問題となります。入学者が少なければ授業料収入などにも影響します。収入が減少すれば教育環境や教職員体制を維持することが難しくなる場合もあります。一方で大学には学生を教育し卒業後に社会で活躍できる人材を育成する責任があります。入学者を確保することだけを優先すれば良い訳ではありません。
大学経営と教育の質を両立させることがこれまで以上に重要になっているのです。
しかし各大学定員と実際の入学者数が長期的に乖離している場合には大学定員の見直しや学部の再編などを検討する必要に迫られます。実際に薬学部では入学者の確保が難しくなった大学や学部の募集停止を決めた大学も続出しています。こうした動向から各大学の新設や定員拡大によって供給が増えたとしても受験生の需要がいつまでも続くとは限らないことが分かります。
受験生の人気が低下し入学者数が減少すれば大学経営に影響が及びます。そして経営上の判断によって定員削減・学部の再編・募集停止等が検討されることになります。この問題は、薬学部だけに限ったものではありません。18歳人口が減少する中で女子大学や短期大学を含め多くの高等教育機関が規模の適正化を迫られています。
財務省も大学数や学部定員を人口減少に対応した規模に見直す必要性を示しています。僕はこうした動きを単なる一時的な受験人気の変化として見るべきではないと考えています。人口減少という大きな構造変化の中で大学のあり方そのものが厳しく問われ始めているからです。
ただし歯学部の定員充足率や大学の経営状況はそれぞれの大学によって異なります。現時点で全ての歯学部が同じ方向に進むと断定することはできません。また歯科医療には地域差があります。人口が減少している地域であっても歯科医療へのアクセスを維持する必要がある場所はあります。
その為に単純に歯科医師の人数だけを見て全国一律に養成規模を決めればよいというものでもありません。それでも国が医学部・歯学部・薬学部の定員削減を提言した以上は歯学部定員や歯科医師養成のあり方が今後の政策課題となる可能性が出てきます。各大学側もこれまでの教育体制や定員を維持するだけでなくどのような歯科医師を育て社会に送り出すのかを改めて考える時期が来ているでしょう。
卒業できる学生数と歯科医師国家試験を受験する学生の数は入学時の人数と必ずしも一致しません。また歯科医師国家試験に合格する為には大学を卒業するだけでは不十分です。試験に必要な知識を身につけ出題される問題に充分対応できる学力を養う必要があります。大学が卒業(学士)判定を厳格に行う様になれば卒業後に歯科医師国家試験を受験する学生の集団が変化します。
ただしその影響がどの程度あるのかは各大学毎の卒業者数や受験者数・合格率などを確認しなければ分かりません。歯科医師国家試験合格者数が減少したという事実だけで卒業判定が厳しくなったことが原因だと断定することはできません。しかし各大学の入学定員・進級・卒業(学士)状況・歯科医師国家試験受験者数と合格者数は別々の問題ではなく一連の流れとして考える必要があります。
入学した学生がどのように学びどの程度が卒業し歯科医師国家試験に何人が合格するのか。これらを継続的に確認する事が歯科医師養成の現状を正しく理解するために必要です。
入学した時点で将来の歯科医師免許が約束されるわけではありません。さらにこれから大学を選ぶ人は入学時の偏差値や学費だけでなく教育体制・進級と卒業状況・歯科医師国家試験合格状況なども確認することが大切です。もちろん歯科医師国家試験合格率だけで大学の良し悪しを判断することも適切ではありません。受験者数や新卒・既卒の構成・卒業迄の経過等背景にある情報も見る必要があります。
しかし大学を選ぶ段階から卒業と歯科医師国家試験合格迄を見通しておくことはこれまで以上に重要になっていると私は考えています。入学することだけを目標にするのではなく入学後に何を学びどのように進級・卒業・歯科医師国家試験に合格するのか。この一連の道筋を意識して、進路を考えていただきたいと思います。
目前の進級・CBT・臨床実習・卒業(学士)試験に歯科医師国家試験に向けて必要な知識を確実に身につけていくことです。各試験に必要な知識は問題の答えを暗記するだけでは十分ではありません。基礎を理解し臨床と結びつけ教科書に書かれている内容を自分の言葉で説明できるようにしていくことが大切です。
成績が思うように伸びない時には勉強時間を増やすだけでなく何が理解できていないのかを確認してください。勉強方法が適切なのか不足している科目はどこなのか問題を解いた後に教科書へ戻っているのか。こうした基本を見直すことが合格に向けた確かな一歩になります。
大学を卒業することと歯科医師国家試験に合格することを別々の目標として考えないでください。進級の段階から卒業後の歯科医師国家試験までを見据えて学んでいくことが重要です。
大切なのは昨年の勉強を振り返り何を変える必要があるのかを具体的に考えることです。過去問題を繰り返しても成績が伸びないのであれば教科書に戻って知識の土台を確認する必要があるかもしれません。模擬試験で同じ分野を間違えているのであれば間違いの原因を分析し、復習の方法を変える必要があるかもしれません。
「今年こそ頑張る」という気持ちだけでなく昨年と違う行動を積み重ねることが必要です。また合格者数が減少したからといって自分の可能性まで否定する必要はありません。必要なのは現状を正確に把握し合格に向けて何を改善するべきかを考えることです。一人で判断することが難しい時は第三者に学習状況を確認してもらうことも選択肢の一つです。
だからこそ確かな資料に基づいて状況を把握し変化を注視する必要があります。僕は歯科医師国家試験合格者数が減少する時代だからこそ歯科医師を目指す学生一人ひとりがより確かな学力を身につけることが大切だと考えています。歯科大学に入学することが最終目標ではありません。進級することだけが目標でもありません。卒業して歯科医師国家試験合格して歯科医師として社会に貢献できるようになることが最終的な目標です。
その為には基礎をおろそかにせず教科書を読み知識を理解し臨床につなげていくことが必要です。そして成績が伸び悩んだ時には原因を確認し必要に応じて勉強方法を見直すことが大切です。
財務省提言は歯学部定員や歯科医師養成のあり方を考える上で重要な問題提起です。各大学経営環境も人口減少の影響を受けながら変化していくでしょう。しかしながら政策や大学の状況が変わるなかでも歯科医師を目指す学生にとって学ぶべきことの本質がなくなる訳ではありません。
必要な知識を身につけ基礎を理解し臨床と結びつけ歯科医師国家試験に対応できる力を養うこと。それが歯科医師になるための基本です。合格者数の数字だけを見て不安になるのではなくその数字の背景を理解し自分が今何をすべきなのかを考えてください。現役生のみなさんは進級・卒業・歯科医師国家試験を一つの流れとして捉え早い段階から準備を進めてください。
既卒生のみなさんは昨年の結果を振り返り同じ失敗を繰り返さない為に勉強方法を見直してください。歯科医師国家試験合格者数が減少する時代だからこそ目先の数字に振り回されず確かな学力を積み重ねることが必要です。
時代が変わっても合格に必要な学力を身につけるという基本は変わりません。
僕はこれからも歯科医師を目指すみなさんが卒業と歯科医師国家試験合格という目標に向かって進める様に現場から考え伝え続けていきます。
弘中塾 弘中崇
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追記です。
2026年4月23日に財務省財政制度等審議会にて医学部・歯学部・薬学部について人口減少と医療提供の効率化を踏まえ**「大胆な定員削減に踏み切るべき」**との提言が示されました。財務省は歯科医師・薬剤師について2012年以降各国家試験合格者数が平均で入学定員の約8割にとどまっていることなどを根拠に挙げています。厚生労働省
一方で2026年3月に発表された第119回歯科医師国家試験合格者は1,757人であり前年第118回2,136人から379人減少しました。新卒者合格者1,482人既卒者275人でした。厚生労働省
上記二つの動きをつなげるとこれからの歯科医師国家試験を考えるうえで見過ごせない問題が浮かび上がり今回のコラムにしました。
ただし財務省提言がそのまま歯科医師国家試験合格者数を一定数に制限する決定になったわけではありません。そこは事実として区別する必要があります。その上で政策の方向性・大学経営・入学定員・卒業(学士)判定・歯科医師国家試験合格者数がどのように関係していくのかを受験生と保護者の方お伝えしたかったです。
「完全撤退ラッシュ」「定員充足率」という問題にも触れました。ただし個々の大学募集停止や撤退が定員充足率だけで決まる訳ではない為に各大学経営判断を左右する重要指標の一つとして扱い必要以上に断定しない形でまとめました。
===
先日財務省OBの方とお会いしてお話を伺いました。
「こちらとしては以前からはっきりと人口減少と医療提供の効率化を念頭に医学部や歯学部と共に薬学部についても大胆な定員削減に踏み切るべきだと提言しており逆風はさらに強まるだろう。完全撤退ラッシュが続く何よりの裏付けは「定員充足率」ではないかと思う。」
「薬学部新設ラッシュで供給過剰になったタイミングに受験人気の熱が下がり入学定員に対しどれだけ入学者が埋まっているかを示す「入学定員充足率」(入学者数÷入学定員)100%を大幅に割る薬学部が大量発生している。この事は他学部にも言え女子大(85%定員割れ)や短大(同95%定員割れ)も今直面する問題になっている事は説明はもう不要だろう。」との事でした。
この後に続きがありますが今回はこの辺で終わりにします。
久し振りでしたが非常に厳しい内容でした。
また文科省の友人も別視点でしたが全く同様でした。
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歯科医師国家試験、歯科国試合格、歯科大学卒業・進級・留年、卒国試過去問、オンライン、CBT、歯科国試直前講習等をテーマに今後もコラム・よくある質問を公開させて頂く予定です。
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政策委員長談話「需給問題が歯科医師の質低下に」/機関紙2017年6月1日号(№567)2面掲載
厚労省歯科医師国家試験関連サイト
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各歯科大学生と既卒生のみなさん、こんにちは、弘中塾の弘中 崇です。
本日は
歯科国試合格者数減の時代とは
――人口減少・大学の定員削減とこれから歯科医師を目指す人たちの未来について
塾長コラム137|公開させて頂きました。どうぞ最後迄宜しくお願い致します。
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1.歯科医師国家試験を取り巻く環境が大きく変わり始めています
歯科医師国家試験を目指す受験生・保護者のみなさまに今ぜひ知っておいていただきたいことがあります。それは歯科医師国家試験の合格者数をめぐる問題が単に試験の難易度や合格率だけで語れる段階ではもうなくなっているということです。日本の人口は減少を続けています。18歳人口も長期的には減少し大学を取り巻く環境は厳しさを増しています。医療分野においても医療費の適正化や医療提供体制の効率化が大きな課題となっています。こうした中で2026年4月23日に財務省の財政制度等審議会では医学部・歯学部・薬学部の定員について人口減少や医療提供の効率化を踏まえ大胆な削減に踏み切るべきだという考え方が示されました。同省は歯科医師・薬剤師について2012年以降の歯科医師国家試験合格者数が平均で定員数の約8割にとどまっていることなどを挙げ既に養成定員が過剰であるとの見方をはっきりと示しています。
これは歯科医師を目指す人たちにとって決して小さなニュースではありません。もちろんこの提言がそのまま歯科医師国家試験の合格者数を削減する決定になったわけではありません。大学の入学定員をどのように変更するのか歯科医師国家試験合格者数をどのように考えるのかについてはそれぞれ別の制度上議論が必要です。
しかし国の財政を担当する財務省が人口減少と医療提供の効率化を背景として医学部・歯学部・薬学部の定員削減を明確に提言したことは今後の政策を考える上で重要な変化です。
僕はこれまでの歯科医師国家試験推移と現在の大学を取り巻く状況を合わせて考える必要があると感じています。
2.第119回歯科医師国家試験の合格者は1,757人でした
まず実際の歯科医師国家試験について数字を確認してみます。2026年3月に発表された第119回歯科医師国家試験結果は次のとおりでした。
- 受験者数:2,837人
- 合格者数:1,757人
- 全体の合格率:61.9%
- 新卒者の合格者数:1,482人
- 既卒者の合格者数:275人
歯科医師国家試験結果には問題の難易度・受験者の学力・大学における教育・卒業までの過程・既卒者の受験状況等様々な要因が関係します。合格者数が減少した理由を一つの要因だけで説明することはどうしてもできません。ただ受験生にとって重要なのは実際に合格した人数が減少したという事実です。
歯科医師国家試験を目指す人は合格率という数字だけでなく合格者数や新卒・既卒それぞれの結果にも目を向ける必要があります。特に既卒者については第119回の合格率は27.8%でした。既卒者として再挑戦する場合は現役時代とは異なる課題を抱えていることも少なくありません。一度不合格になったからといって次も必ず不合格になるわけではありません。しかし昨年と同じ勉強方法を続ければ良いとも限りません。合格者数が減少する時代だからこそ自分の学力と勉強方法を客観的に確認する事がこれまで以上に重要です。
3.今春に財務省はなぜ歯学部定員削減を提言したのでしょうか
財務省提言の背景には大きく分けて二つの考え方があります。一つは人口減少です。
これから日本の人口が減少していく中で医療を必要とする人の数や医療需要が地域や診療分野によって変化していくことが予想されます。高齢化が進む一方で人口そのものは減少していきます。
もう一つは医療提供体制の効率化です。
医療を支える人材や財源には限りがあります。医療費の適正化を進めながら必要な医療を安定して提供していくためには人材をどのように養成しどのように配置するのかという問題を避けて通れません。財務省は医師・歯科医師・薬剤師の人数が増加してきたことを指摘し今後の人口動態や医療提供の効率化を考えるとこれらの資格を持つ人材をさらに増やす必要性は乏しいとの見方を示しています。
そして学問分野間の人材配分を適正化する観点から医学部・歯学部・薬学部の定員削減を提言しました。
ここで注意しておきたいことがあります。
財務省が示したのは財政制度等審議会における政策提言です。歯科医師国家試験合格者数を毎年何人にするのかあるいは各大学の歯学部定員を何人削減するのかがこの提言だけで決定したわけではありません。しかし政策を考える上でこうした提言が無視できないことも確かです。
今後は関係省庁(厚労省・文科省)での検討や制度の見直しが進めば歯学部の定員や歯科医師養成のあり方に影響が及ぶ可能性があります。僕はこれから歯科医師を目指す人たちには試験問題だけでなくこうした社会や政策の変化にも必ず関心を持ってほしいと思っています。
4.大学の定員充足率が示しているもの
歯科大学を取り巻く環境を考えるとき重要な指標の一つが「入学定員充足率」です。入学定員充足率とは入学定員に対して実際にどれだけの学生が入学したかを示す数字です。計算式は次のとおりです。入学定員充足率=入学者数÷入学定員×100(%)
例えば入学定員が100人の学部に80人が入学した場合入学定員充足率は80%です。定員充足率が100%を下回っていれば定員に対して入学者が不足していることになります。ただし定員充足率が低いからといってその大学教育について質が低いと直ちに判断できるわけではありません。地域における役割・教育内容・学生の修学状況・大学全体の経営状況なども確認する必要があります。
それでも定員充足率が長期間にわたって低い状態にある場合は大学経営にとって重要な問題となります。入学者が少なければ授業料収入などにも影響します。収入が減少すれば教育環境や教職員体制を維持することが難しくなる場合もあります。一方で大学には学生を教育し卒業後に社会で活躍できる人材を育成する責任があります。入学者を確保することだけを優先すれば良い訳ではありません。
大学経営と教育の質を両立させることがこれまで以上に重要になっているのです。
5.薬学部で起きていることは歯学部にとっても他人事ではありません
薬学部では大学新設や定員拡大などが進んだ一方で大学の中では入学者確保が難しくなっています。文部科学省は薬学部入学定員・入学者数・修学状況・歯科医師国家試験合格状況などについて調査結果を公表しています。これらの資料を見ると薬学部を一括りにして考えることはできません。各大学毎に定員充足率や修学状況・歯科医師国家試験結果には違いがあります。しかし各大学定員と実際の入学者数が長期的に乖離している場合には大学定員の見直しや学部の再編などを検討する必要に迫られます。実際に薬学部では入学者の確保が難しくなった大学や学部の募集停止を決めた大学も続出しています。こうした動向から各大学の新設や定員拡大によって供給が増えたとしても受験生の需要がいつまでも続くとは限らないことが分かります。
受験生の人気が低下し入学者数が減少すれば大学経営に影響が及びます。そして経営上の判断によって定員削減・学部の再編・募集停止等が検討されることになります。この問題は、薬学部だけに限ったものではありません。18歳人口が減少する中で女子大学や短期大学を含め多くの高等教育機関が規模の適正化を迫られています。
財務省も大学数や学部定員を人口減少に対応した規模に見直す必要性を示しています。僕はこうした動きを単なる一時的な受験人気の変化として見るべきではないと考えています。人口減少という大きな構造変化の中で大学のあり方そのものが厳しく問われ始めているからです。
6.歯学部もこれまでと同じ形で存続できるとは限りません
歯学部についてもこれからの状況を慎重に見ていく必要があります。各大学の定員が維持されていても実際の入学者数が減少すれば定員充足率は低下します。定員充足率の低下が続けば各大学は経営面から定員を見直すことになるかもしれません。学部の再編や募集停止等より大きな判断が必要になる可能性もあります。ただし歯学部の定員充足率や大学の経営状況はそれぞれの大学によって異なります。現時点で全ての歯学部が同じ方向に進むと断定することはできません。また歯科医療には地域差があります。人口が減少している地域であっても歯科医療へのアクセスを維持する必要がある場所はあります。
その為に単純に歯科医師の人数だけを見て全国一律に養成規模を決めればよいというものでもありません。それでも国が医学部・歯学部・薬学部の定員削減を提言した以上は歯学部定員や歯科医師養成のあり方が今後の政策課題となる可能性が出てきます。各大学側もこれまでの教育体制や定員を維持するだけでなくどのような歯科医師を育て社会に送り出すのかを改めて考える時期が来ているでしょう。
7.大学の卒業(学士)判定と歯科医師国家試験合格者数を考える
歯科医師国家試験の合格者数を考える時に忘れてはならないのが大学の卒業(学士)判定です。歯学部では学生は入学してから6年間の教育を受け卒業に必要な要件を満たした上で歯科医師国家試験に臨みます。しかし入学した学生が全員6年後に卒業できるわけでは無く実際には私立全体で見ると25%しかありません。進級・卒業(学士)試験などを経て卒業に至るまでには多くの関門があります。卒業できる学生数と歯科医師国家試験を受験する学生の数は入学時の人数と必ずしも一致しません。また歯科医師国家試験に合格する為には大学を卒業するだけでは不十分です。試験に必要な知識を身につけ出題される問題に充分対応できる学力を養う必要があります。大学が卒業(学士)判定を厳格に行う様になれば卒業後に歯科医師国家試験を受験する学生の集団が変化します。
ただしその影響がどの程度あるのかは各大学毎の卒業者数や受験者数・合格率などを確認しなければ分かりません。歯科医師国家試験合格者数が減少したという事実だけで卒業判定が厳しくなったことが原因だと断定することはできません。しかし各大学の入学定員・進級・卒業(学士)状況・歯科医師国家試験受験者数と合格者数は別々の問題ではなく一連の流れとして考える必要があります。
入学した学生がどのように学びどの程度が卒業し歯科医師国家試験に何人が合格するのか。これらを継続的に確認する事が歯科医師養成の現状を正しく理解するために必要です。
8.「入学できること」と「歯科医師になれること」は違います
これから歯学部を目指す受験生や保護者のみなさまにはぜひ考えていただきたいことがあります。それは歯学部に入学する事と歯科医師になることは同じではないという事です。入学試験に合格すれば歯学部で学ぶ機会を得ることができます。しかしその後には進級・CBT・臨床実習・卒業(学士)試験に歯科医師国家試験等いくつもの段階があります。入学した時点で将来の歯科医師免許が約束されるわけではありません。さらにこれから大学を選ぶ人は入学時の偏差値や学費だけでなく教育体制・進級と卒業状況・歯科医師国家試験合格状況なども確認することが大切です。もちろん歯科医師国家試験合格率だけで大学の良し悪しを判断することも適切ではありません。受験者数や新卒・既卒の構成・卒業迄の経過等背景にある情報も見る必要があります。
しかし大学を選ぶ段階から卒業と歯科医師国家試験合格迄を見通しておくことはこれまで以上に重要になっていると私は考えています。入学することだけを目標にするのではなく入学後に何を学びどのように進級・卒業・歯科医師国家試験に合格するのか。この一連の道筋を意識して、進路を考えていただきたいと思います。
9.現役生のみなさんへ
――目前の試験を軽く考えないでください
現在歯学部で学んでいる学生のみなさんにお伝えしたいことがあります。国の政策が変わるかもしれない。歯学部定員が見直されるかもしれない。歯科医師国家試験合格者数が更に減少するかもしれない。こうしたニュースを見て不安になることもあるでしょう。しかし今みなさんが取り組むべきことは将来の政策を心配するだけではありません。目前の進級・CBT・臨床実習・卒業(学士)試験に歯科医師国家試験に向けて必要な知識を確実に身につけていくことです。各試験に必要な知識は問題の答えを暗記するだけでは十分ではありません。基礎を理解し臨床と結びつけ教科書に書かれている内容を自分の言葉で説明できるようにしていくことが大切です。
成績が思うように伸びない時には勉強時間を増やすだけでなく何が理解できていないのかを確認してください。勉強方法が適切なのか不足している科目はどこなのか問題を解いた後に教科書へ戻っているのか。こうした基本を見直すことが合格に向けた確かな一歩になります。
大学を卒業することと歯科医師国家試験に合格することを別々の目標として考えないでください。進級の段階から卒業後の歯科医師国家試験までを見据えて学んでいくことが重要です。
10.既卒生のみなさんへ――昨年と同じ一年にしないために
既卒生として再挑戦している方にとって合格者数減少というニュースは決して他人事ではないと思います。これまで努力してきたのに合格できなかった。もう一度挑戦するために勉強を続けている。それでも今年こそ合格できるのかという不安は消えない。そうした思いを抱えている方もいるでしょう。しかし昨年の結果だけで今年の結果が決まるわけではありません。大切なのは昨年の勉強を振り返り何を変える必要があるのかを具体的に考えることです。過去問題を繰り返しても成績が伸びないのであれば教科書に戻って知識の土台を確認する必要があるかもしれません。模擬試験で同じ分野を間違えているのであれば間違いの原因を分析し、復習の方法を変える必要があるかもしれません。
「今年こそ頑張る」という気持ちだけでなく昨年と違う行動を積み重ねることが必要です。また合格者数が減少したからといって自分の可能性まで否定する必要はありません。必要なのは現状を正確に把握し合格に向けて何を改善するべきかを考えることです。一人で判断することが難しい時は第三者に学習状況を確認してもらうことも選択肢の一つです。
11.歯科医師を目指す人たちに今伝えたいこと
人口減少に医療提供体制効率化に大学定員削減等そして歯科医師国家試験合格者数。これらは一見すると別々の問題のように見えます。しかしこれからの歯科医師養成を考える上では互いに関係する重要なテーマです。今後は歯学部定員がどのように見直されるのか歯科医師国家試験合格者数がどのように推移するのかについて現時点ですべてを予測することはできません。だからこそ確かな資料に基づいて状況を把握し変化を注視する必要があります。僕は歯科医師国家試験合格者数が減少する時代だからこそ歯科医師を目指す学生一人ひとりがより確かな学力を身につけることが大切だと考えています。歯科大学に入学することが最終目標ではありません。進級することだけが目標でもありません。卒業して歯科医師国家試験合格して歯科医師として社会に貢献できるようになることが最終的な目標です。
その為には基礎をおろそかにせず教科書を読み知識を理解し臨床につなげていくことが必要です。そして成績が伸び悩んだ時には原因を確認し必要に応じて勉強方法を見直すことが大切です。
最後に
歯科医師国家試験を取り巻く環境はこれからも大きく変化していくでしょう。財務省提言は歯学部定員や歯科医師養成のあり方を考える上で重要な問題提起です。各大学経営環境も人口減少の影響を受けながら変化していくでしょう。しかしながら政策や大学の状況が変わるなかでも歯科医師を目指す学生にとって学ぶべきことの本質がなくなる訳ではありません。
必要な知識を身につけ基礎を理解し臨床と結びつけ歯科医師国家試験に対応できる力を養うこと。それが歯科医師になるための基本です。合格者数の数字だけを見て不安になるのではなくその数字の背景を理解し自分が今何をすべきなのかを考えてください。現役生のみなさんは進級・卒業・歯科医師国家試験を一つの流れとして捉え早い段階から準備を進めてください。
既卒生のみなさんは昨年の結果を振り返り同じ失敗を繰り返さない為に勉強方法を見直してください。歯科医師国家試験合格者数が減少する時代だからこそ目先の数字に振り回されず確かな学力を積み重ねることが必要です。
時代が変わっても合格に必要な学力を身につけるという基本は変わりません。
僕はこれからも歯科医師を目指すみなさんが卒業と歯科医師国家試験合格という目標に向かって進める様に現場から考え伝え続けていきます。
弘中塾 弘中崇
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追記です。
2026年4月23日に財務省財政制度等審議会にて医学部・歯学部・薬学部について人口減少と医療提供の効率化を踏まえ**「大胆な定員削減に踏み切るべき」**との提言が示されました。財務省は歯科医師・薬剤師について2012年以降各国家試験合格者数が平均で入学定員の約8割にとどまっていることなどを根拠に挙げています。厚生労働省
一方で2026年3月に発表された第119回歯科医師国家試験合格者は1,757人であり前年第118回2,136人から379人減少しました。新卒者合格者1,482人既卒者275人でした。厚生労働省
上記二つの動きをつなげるとこれからの歯科医師国家試験を考えるうえで見過ごせない問題が浮かび上がり今回のコラムにしました。
ただし財務省提言がそのまま歯科医師国家試験合格者数を一定数に制限する決定になったわけではありません。そこは事実として区別する必要があります。その上で政策の方向性・大学経営・入学定員・卒業(学士)判定・歯科医師国家試験合格者数がどのように関係していくのかを受験生と保護者の方お伝えしたかったです。
「完全撤退ラッシュ」「定員充足率」という問題にも触れました。ただし個々の大学募集停止や撤退が定員充足率だけで決まる訳ではない為に各大学経営判断を左右する重要指標の一つとして扱い必要以上に断定しない形でまとめました。
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先日財務省OBの方とお会いしてお話を伺いました。
「こちらとしては以前からはっきりと人口減少と医療提供の効率化を念頭に医学部や歯学部と共に薬学部についても大胆な定員削減に踏み切るべきだと提言しており逆風はさらに強まるだろう。完全撤退ラッシュが続く何よりの裏付けは「定員充足率」ではないかと思う。」
「薬学部新設ラッシュで供給過剰になったタイミングに受験人気の熱が下がり入学定員に対しどれだけ入学者が埋まっているかを示す「入学定員充足率」(入学者数÷入学定員)100%を大幅に割る薬学部が大量発生している。この事は他学部にも言え女子大(85%定員割れ)や短大(同95%定員割れ)も今直面する問題になっている事は説明はもう不要だろう。」との事でした。
この後に続きがありますが今回はこの辺で終わりにします。
久し振りでしたが非常に厳しい内容でした。
また文科省の友人も別視点でしたが全く同様でした。
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歯科医師国家試験、歯科国試合格、歯科大学卒業・進級・留年、卒国試過去問、オンライン、CBT、歯科国試直前講習等をテーマに今後もコラム・よくある質問を公開させて頂く予定です。
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