2浪以上の皆さんへ
― 今秋からの追い上げで最後の一年を「合格する一年」に変える ―|塾長コラム126
公開させて頂きました。
第119回歯科医師国家試験の結果が発表されました。
受験者2,837人に対して合格者は1,757人。合格率は61.9%でした。前年の第118回では70.3%でしたから全体の合格率は大きく下がりました。さらに既卒者に限れば受験者988人に対して合格者275人で合格率は27.8%でした。
この数字を見て僕は今年何人もの既卒生から同じような言葉を聞きました。
「もう一度受けるのが怖くなりました」「2浪以上になって、また落ちたらと思うと……」「家族に、もう一年お願いするのが申し訳ないです」
そして中には「今年度はもう受けないことにしようと思っています」という学生も沢山いました。
僕はその気持ちを否定するつもりはありません。むしろここまで何年も歯科医師国家試験と向き合ってきた学生だからこそ簡単に「もう一度頑張りましょう」とは言えないと思っています。
一度落ちるだけでも苦しいこの試験です。それが二度三度となれば本人の精神的な負担はもちろん保護者の負担も大きくなります。
「今年も駄目だったらどうしよう」「何年続ければいいのだろう」「本当に歯科医師になれるのだろうか」「歯科医師でなくても良いのではないか。」「これ以上の受験は家族全体が大きな混乱ともめ事になるのではないか」
そう考えるのは決して弱いことではありませんし普通の感情です。
むしろそれだけ真剣に人生を考えているからこそ出てくる悩みです。
それでも私は、2浪以上の皆さんに、どうしても伝えたいことがあります。
もし今、「もう一回だけ」と保護者の方にお願いしたのであれば、その一年を絶対に無駄にしてはいけません。
そして、その一年は「これまで以上に頑張る一年」ではありません。
「これまでの勉強を変える一年」です。
「もう一回」は精神論ではありません
2浪以上になると周囲からいろいろなことを言われます。
「あと一年頑張れば大丈夫」「諦めなければ必ず受かる」「努力は裏切らない」どれも間違ってはいません。しかし歯科医師国家試験についてはそれだけでは足りません。私は長く学生を見てきましたが歯科医師国家試験は精神力だけで通過できる試験ではなくなっています。
もちろん最後まで諦めない気持ちは必要です。
しかし「今年は絶対に合格する」という気持ちだけで昨年と同じ問題集を同じ方法で繰り返していたら結果が変わらない可能性があります。ここを2浪以上の皆さんには厳しく考えてほしいのです。
努力量を増やす前に努力の中身を変える。
これが今秋からの最大のテーマです。
なぜこれまで勉強してきたのに合格できなかったのか
ここからが、本当のスタートです。
2浪以上の皆さんには既に勉強した経験があります。過去問も見ています。全国模試も受けています。講義も聞いているかもしれません。参考書もたくさん持っているでしょう。つまり「何も知らない学生」ではありません。
むしろ逆です。
知識はあるのに合格点に届かない。ここに問題があります。
ではなぜでしょうか。
まず考えてほしいのは「自分は何が原因で落ちたのか」ということです。単純な知識不足だったのか。必修が弱かったのか。臨床実地問題への対応力が不足していたのか。総論・各論のどこかに大きな穴があったのか。問題を読む力が不足していたのか。時間配分だったのか。全国模試では取れるのに本番で崩れたのか。
あるいは勉強している範囲が自分の弱点とずれていたのか。
ここを曖昧にしたまま、もう一年を始めてはいけません。
「去年の続き」をやらない
2浪以上の学生に最もお願いしたいことがあります。
去年の勉強をそのまま今年も繰り返さないでください。
もちろん必要な教材はあります。繰り返すべき問題もあります。しかし「去年これをやったから、今年もこれをやる」という発想ではいけません。去年の勉強で合格できなかったのであれば「何をやったか」ではなく「なぜ合格できなかったのか」
から今年の計画を作るべきです。
例えば過去問を10年分やったとします。しかし本番で初見問題に対応できなかったのであれば11年分目を追加することが答えとは限りません。むしろ教科書に戻る必要があるかもしれません。基本事項を整理し直す必要があるかもしれません。臨床と基礎のつながりを作り直す必要があるかもしれません。
「もっとやる」ではなく「違うやり方をする」。
これが、2浪以上の受験生には必要です。
今秋は「追い上げる時期」です
では、8月と9月以降をどう考えるか。僕は今秋を非常に重要な時期だと考えています。歯科医師国家試験迄まだ時間があります。しかし余裕があるわけではありません。だからこそここで一度全体を見直す必要があります。
まず自分の現在地を知る。そして合格までに必要な距離を知る。そのうえで弱点を一つずつ埋めていく。ここで大切なのは最初から全部を完璧にしようとしないことです。2浪以上の学生は勉強量が多いだけに「あれもやらなければ」「これもやらなければ」となりやすい。
しかし時間には限りがあります。
今の自分に必要な勉強を選ぶことも受験対策です。
今秋までに「何ができるようになったか」を確認する
僕は秋の段階で一度は数字を見てほしいと思っています。全国模試の点数だけではありません。例えば「この分野なら説明できる」「この問題は、なぜその答えになるのか説明できる」「この疾患なら病態から診断と治療までつなげて考えられる」こういう「できる」を増やしてください。問題を解いて正解した。それだけではありません。なぜ正解したのかを説明できること。これが重要です。
歯科医師国家試験が難しくなればなる程に単純な記憶だけでは対応しにくくなります。第119回では全体の合格率が61.9%既卒者では27.8%でした。少なくとも既卒受験生にとっては非常に厳しい結果だったことは数字からも分かります。
だからこそ今年は「去年より多く問題を解く」という目標だけでは足りません。去年より深く理解する。
ここを目標にしてください。
2浪以上だからこそ教科書へ戻る
これは以前から何度もお話ししています。過去問は大切です。しかし過去問だけでは限界があります。特に2浪以上になった学生程に一度教科書に戻ってほしいと思います。「今さら教科書ですか?」そう思うかもしれません。しかし今だからこそです。
過去問を何度も解いた経験があるからこそ教科書を読むと「あの問題はここにつながっていたのか」と気付くことがあります。
点で覚えていた知識が線になります。線になった知識がやがて面になります。
その状態になって初めて、初めて見る問題に対応できるようになります。
「最後の一年」は最後だからこそ杭を残さず大切にする
保護者の方に「もう一年だけお願いします」とお願いした学生もいるでしょう。その言葉は簡単なものではないと思います。何年も支えてくれた家族に、もう一度お願いする。経済的な負担もあります。精神的な負担もあります。
友人が歯科医師として働き始める中で自分だけが受験生として残る苦しさもあります。
だから僕は「最後の一年だから死ぬ気で頑張れ」とは言いたくありません。それでは精神論になってしまいます。
そうではなく「最後の一年だから今までと同じことをしないでください」と伝えたいのです。
諦めなかった気持ちを結果につなげる
「もう一回」と決めたのであればその気持ちを大切にしてください。
ただし気持ちだけでは合格できません。気持ちを計画に変える。計画を毎日の行動に変える。行動を結果につなげる。この順番が必要です。そして、途中で模試の結果が思うように出ないこともあるでしょう。その時に「やっぱり自分には無理だ」と考えないでください。
むしろ「どこが足りなかったのか」を見る。そして修正する。それでも足りなければもう一度修正する。受験勉強とはその繰り返しです。
2浪以上の皆さんへ
僕は皆さんに「諦めるな」と簡単には言いません。ここまで来た人にその一言だけを言うことは無責任だと思うからです。皆さんはもう十分に苦しんでいます。努力もしています。だからこそこれから必要なのはさらに苦しむことではなく苦しみ方を変えることです。一人で抱え込まない。分からないことを分からないままにしない。できない分野から逃げない。そして、これまでの勉強を一度壊してでも必要なら作り直す。
それができれば今秋からでも十分に追い上げることはできます。
最後に
第119回歯科医師国家試験では合格者は1,757人でした。この事は何度も何度もお話をしました。この何年も合格者数減を言ってきました。この数字を見て「自分はもう無理だ」と思った学生がいるかもしれません。しかし私は数字だけを見て自分の一年を決めてほしくありません。確かに歯科医師国家試験は厳しくなっています。既卒者にとって簡単な試験ではありません。それは分かっています。
だからこそこれまで以上に「正しい準備」が必要です。精神力だけでは足りない。努力量だけでも足りない。過去問だけでも足りない。
必要なのは自分の失敗を正面から見つめその原因を一つずつ取り除いていくことです。
もし今年は保護者の方に「もう一回だけお願いします」と言ったのであればその言葉を自分自身にも言ってください。「自分にももう一回だけ挑戦する時間を与えよう」そしてその一年をこれまでの一年と同じにしないでください。
8月から9月へそして10月。
一日一日は小さく見えるかもしれません。しかし秋から冬にかけて積み上げたものが冬の全国模試を変え直前期の自信を変えそして本番の一問を変えます。今の成績が合格圏に届いていなくてもそこで自分の一年を決めないでください。追い上げは今から始められます。ただしその追い上げは「もっと頑張る」ことから始まるのではありません。
「今までのやり方で本当に良かったのか」と自分自身に問い直すことから始まります。
そして僕は2浪以上の皆さんにこそ最後にこの言葉を伝えたいと思います。
諦めなかったことを最後は結果で証明しましょう。
そのために残された一年を僕は「最後の一年」ではなく「合格するために使えるもう一度の一年」と考えてほしいと思っています。
今秋は仕上げでありまだ終わりではありません。
ここからです。
弘中塾 塾長 弘中 崇