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卒業判定直前の総仕上げと臨床実習問題への橋渡し|塾長コラム79 公開させて頂きました。

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各歯科大学生と既卒生のみなさん、こんにちは、弘中塾事務局からのお知らせです。 

本日は


卒業判定直前の総仕上げと臨床実習問題への橋渡し

——基礎から臨床へとつながる“学びの接続”をどう作るか——

公開させて頂きました。

どうぞ最後迄宜しくお願い致します。

2026年の新しい年を迎えました。
歯学部学生の皆さんにとってこの年明けは「いよいよ卒業判定が迫る」という独特の緊張感に満ちた時期です。各歯科大学で実施時期に差はありますが多くの歯学部生が12月から1月にかけて卒業・学士試験・卒業判定に臨むことになります。そして同時にこの時期は「臨床実習問題へ向けた最終の準備期間」としても極めて重要です。

卒業判定と臨床実習問題対策は学年としては4年生・5年生で区切られていますが学びの構造としては連続しており本来は“ひとつの道”として理解するべきものです。ところが学生の多くがこれらを「別々の山」であるかのように捉えています。そのため卒業判定の勉強が臨床実習問題にうまく結びつかず臨床現場に入った際に「何を見ればいいのか分からない」「先生の言葉が理解できない」という戸惑いを感じることがあります。

しかし本来、卒業判定の総仕上げこそが臨床実習問題への“橋渡し”をする最適なタイミングです。
この時期に正しい勉強と準備を行うことでこの吸収効率は大きく変わります。今回のコラムでは卒業判定直前の総仕上げをどのように進めるべきか。

そして基礎教育から臨床教育へとシームレスに移行するためには何が必要かを丁寧に解説させて頂きます。






■1.卒業判定は「暗記の試験」ではなく、「臨床思考の入口」である

卒業判定を「過去問を覚えて突破する試験」と考えている学生は少なくありません。たしかに過去問分析や類題演習は一定の効果があります。しかし近年、多くの大学で出題傾向が変化し「丸暗記では突破できない出題」が増えています。

これは、歯科医師養成教育の中で“臨床実習への接続を重視する傾向”が年々強くなっているためです。

出題者の視点から見ると卒業判定は単に知識の量を測る試験ではなく




  • 自分の言葉で説明できるか


  • 理由を持って判断できるか


  • 情報を統合して推論できるか


  • 必要な基礎知識を適切に引き出せるか

といった“臨床的な思考の基礎体力”を問う試験へと変化しています。

とりわけ臨床に関連する科目(口腔外科、保存、補綴、歯周、放射線、麻酔など)は正にこの傾向が顕著です。

例えば次のようなケースを考えてみましょう。






◎症例文:

「下顎枝矢状分割術後の患者が術後2日間で開口障害を訴えている。考えられる原因と初期対応を答えよ。」

このような問題に対して単なる知識だけでは太刀打ちできません。
しかし「術後2日で開口が悪い=浮腫か血腫」「まず確認すべきは気道と感染徴候」「画像は必要条件ではない」など臨床の流れを理解していれば考え方が自然に導けます。

ここで求められているのは知っているかどうかではなく考えられるかどうかです。

卒業判定の本質は、臨床実習へ踏み出すための“臨床思考の準備試験”だと捉えるべきです。






■2.総仕上げ期に最も大切なのは「3つの柱」を固めることです

卒業判定直前の1〜2ヶ月は、学習効率が伸びる最後のチャンスです。

この期間を最大化するために、私がお勧めするのが以下の 3つの柱 です。






◎柱1:科目ごとの「思考テンプレート」を作る

医療系の問題にはそれぞれに固有の“思考の型”が存在します。これは医学部・歯学部を問わず臨床系科目に共通する特徴です。

例えば口腔外科では




  1. 主訴


  2. 既往歴


  3. 可能性の高い病態


  4. 必要な検査


  5. 合併症の予測


  6. 禁忌操作の判断

という流れが基本です。

歯周なら




  1. リスク分析(喫煙・糖尿病)


  2. 歯周病のステージとグレード


  3. 必要な初期治療


  4. 再評価の基準


  5. サージカルの適応条件

といった“型”が存在します。

この型を意識せずに問題を解くと表面的な暗記しか身につかず結果として応用問題に対応できなくなります。

翻って思考の型を10個程度作っておけば




  • 選択肢問題


  • 記述問題


  • 画像問題


  • 症例文問題

すべてに対応できるようになります。

総仕上げ期は“暗記ではなく思考パターンの整理”を最優先にすることがポイントです。






◎柱2:基礎から臨床への“対照表”を作る

臨床実習問題に最も効果的なのが「基礎 → 臨床」の翻訳作業です。

例えば、基礎医学の代表である「病理学」。
壊死・線維化・炎症・萎縮・腫瘍性変化などの基礎概念は臨床でそのまま症状・画像所見・所見に変換されます。

たとえば——


●基礎:急性炎症



  • 血管拡張


  • 血管透過性亢進


  • 好中球浸潤

●臨床では:



  • 発赤・腫脹


  • 体温上昇


  • 圧痛


  • 排膿


  • レントゲンでの境界不明瞭な透過像

この「対応関係」を意図的にまとめておくことは卒業判定だけでなく臨床実習での理解を大きく助けます。

さらに薬理と臨床も同様です。




  • NSAIDs → ステロイドとの違い


  • 抗菌薬 → 起炎菌と感受性


  • 抗不整脈 → 麻酔科での注意点

こうした“橋渡し”は、学生のうちに身につける最強の武器になります。






◎柱3:臨床実習を想定した「視点作り」

臨床実習に入った学生が必ずつまずくポイントがあります。それは“どこを見るべきか分からない”ということです。

臨床現場には情報があふれています。




  • 主訴


  • 既往歴


  • バイタル


  • 口腔内診査


  • 画像所見


  • 検査値


  • 生活背景

しかし、これらすべてを同時に見る必要はありません。
むしろ臨床実習問題では最初の“視点の取り方”が最重要です。

総仕上げ期に以下の視点を準備しておくことで実習問題を進める初日から吸収力が劇的に変わります。


●画像(パノラマ・デンタル)を見る順番



  1. 上顎洞


  2. 下顎管


  3. 歯槽骨の連続性


  4. 根尖部


  5. 補綴物の適合


  6. 咬合のズレ

●主訴から推測できる3つの病態

例:咬合痛 → 歯髄炎/根尖性歯周炎/咬合性外傷


●症例記録の書き方



  • 初診時所見


  • 問題点の抽出


  • 診断


  • 治療計画


  • 次回来院時のチェックポイント

これらはすべて卒業判定の問題と直結しているため、試験勉強と実習準備を同時に進められます。






■3.基礎—臨床をつなぐ「4段階モデル」

臨床実習問題や臨床思考を身につけるためには段階的に学びを接続していく必要があります。

私がお勧めするのが次の4段階モデルです。






●第1段階:「知識の因果」を理解する

暗記ではなく「なぜそうなるか」を理解する段階です。

例:歯髄炎
・炎症 → 血流増加
・硬い歯髄腔 → 圧上昇
・神経圧迫 → 自発痛
こうした因果を理解していると、臨床問題で強くなります。






●第2段階:病態の全体像(マップ)を描く

臨床の理解は“地図化”すると一気に整理されます。

例:歯周病
・細菌
・免疫
・炎症
・骨吸収
・生活習慣
・全身疾患
このすべてを一枚のマップに整理すると症状・診断・治療が自然につながります。






●第3段階:臨床的意思決定の練習

歯科医師国家試験では「最も妥当な判断を選ぶ力」が必要です。




  • 優先度


  • 危険性


  • 予後


  • 治療選択


  • 禁忌判断

これらを日常的に練習することで、臨床実習問題にも強くなります。






●第4段階:ケース記録を言語化する力

臨床実習で最も伸びる学生ほど記録が丁寧です。

・症状の変化
・治療後の反応
・リスクの変化
・次回の計画
・不安点の共有
こうした記録は歯科医師国家試験の臨実問題でも必ず役に立ちます。






■4.総仕上げ期に「やってはいけないこと」

卒業判定直前になるとどうしても焦りが生まれます。しかし焦りから「逆効果の勉強」をしてしまう学生も少なくありません。

以下は避けるべき3つです。






✕1:丸暗記中心の勉強

暗記だけでは今の歯科国試は限界があります。
臨床問題は「背景を理解しているか」こそが問われます。






✕2:苦手科目だけをやり続ける

卒業判定の時期に最も伸びるのは“横断的に知識がつながる科目”です。

臨床科目や基礎の復習をバランス良く配置することが重要です。






✕3:同じ形式だけで復習する

穴埋めだけ…
選択肢だけ…
記述だけ…

これは思考が固まり応用ができなくなる典型的なパターンです。






■5.卒業判定直前〜実習開始の“黄金の1ヶ月”をどう使うか

1月から実習開始までの期間は歯科国試でも最も重要な基礎体力がつく時期です。この期間に以下を徹底することで臨実問題での“理解の速さ”が劇的に変わります。




  • 病態の因果を把握する


  • 画像読影の順番を決める


  • 症例記録のテンプレートを作る


  • NG判断(禁忌)を整理する


  • 基礎→臨床の翻訳表を作る


  • 臨床の質問に自分で答える練習をする

臨床実習は“経験の場”であると同時に、“知識の再構築の場”でもあります。

学生が「理解できる場」になるか、「混乱の場」になるかは、この1ヶ月の準備で決まります。






■6.最後に——臨床への一歩を恐れなくて良いのです

毎年この時期になると多くの学生が不安を口にします。

「実習の質問に答えられるか心配です」
「知識が足りない気がします」
「記録がうまく書けるか不安です」

しかし安心してください。

臨床実習とは知識が完璧な学生が行く場所ではありません。

臨床実習は、患者さんを通して本物の理解を築く場所です。
そして、卒業判定の総仕上げはその第一歩を支える大切な準備です。




  • 知識はあとから補えます


  • 判断力は経験で磨かれます


  • 記録力は訓練で身につきます


  • 操作は時間とともに正確になります

大切なのは“学び続ける姿勢”と“臨床に向き合う覚悟”です。

2026年が、皆さんにとって臨床への大きな成長の年となることを願っています。
卒業判定に向けての努力は、必ず未来の患者さんを救う力になります。

最後迄有難う御座いました。

これからも宜しくお願い致します。

弘中塾

弘中 崇

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歯科医師国家試験、歯科国試合格、歯科大学卒業・進級・留年、卒国試過去問、オンライン、CBT、歯科国試直前講習等をテーマに今後もコラム・よくある質問を公開させて頂く予定です。

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政策委員長談話「需給問題が歯科医師の質低下に」/機関紙2017年6月1日号(№567)2面掲載 (https://www.tokyo-sk.com/featured/10655/) https://www.cato.or.jp/cbt/dentistry-cbt/index.html

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